顔を見て話すのは、そんなに好きじゃない。心が見透かされるような気がして。
でも、例外もあったりする。
あの人と目を合わせて話すのは、優しい気持ちになれて、好きだ。
「まーまーキレイだろ。あじけねーけど許せ。」 「気にしませんよー物置とかじゃないですし、スペースありますしコンセントありますし」 「…そ。」 軽く部屋を見せてから、シャーナに鍵をわたし、また廊下にでて、色々とまわる。 会話は、なし。 たまにシャーナが祁葉に質問したりするくらいだ。 「あの、こんな無言だと気まずいのですがー」 「・・・・・」 「もうすこしはなしてくれませんかー」 「・・・・・」 無言。 用件以外話さないつもりらしい。 「祁葉さん。ちょっとこっち向いて下さい。」 なにか思う所があったのか、シャーナは、きつめにそういった。 「…なんだよ。」 しぶしぶシャーナの方をむく、祁葉。目は合わせない。 「ちゃんと目をみてはなしましょうよ。それになぜそう人を拒絶しているんです?」 「別にっ…拒絶なんて、してねぇ。」 少し核心をつかれて、祁葉はドキリとする。 怖かった。なにもかも見透かされた気がして。 「いいえ、してます。そして恐怖…怯えてる。そこまで怯えるほどの事ですか。人間と接するのは まして私は機械ですよ。なにも怖くないでしょう。どうしてですか」 「…っ…!」 怖い。 どうして、と聞かれても。 思い出すのは、暗い場所。牢獄のような、ゲージ。実験室。何もかもが、 無彩色 黒 やめろ やめてくれ 痛い。 これ以上は。 俺は 俺は― 「どう、なされました?」 シャーナの声で、祁葉は我に返った。 「なん、でも…ねぇっ…もう、俺は戻る!お前はこの地図見て適当に覚えろっ」 いったかと思うと、部屋の配置図を押しつけ、走り出す祁葉。 体が、震えていた。 「ちょっと…踏み込みすぎましたかね…そこら辺、難しいですね…人間の心、は。」 シャーナは、苦笑して、地図に目をやる。 そして、適当に歩き出した。 ―過去は消えてなくならない。 過去からの恐怖を、どうやってぬぐい去ろうか。 戻る