単純に愛がほしかった。誰かに愛されたかった。
両親の愛は、もらえない。
この、温かい場所に。研究なんて、汚いこともたくさんしているのに、どうしてか温かいこの場所に
ずっと、私はいたくて。 いつか崩れそうで怖くて。

なるべく考えないようにして、生きていく。





>>006 亜水弥的非機械心







「おはようございます、鼎さん。早いですね…ふぁ…」

「あぁ亜水弥。無理せんでえーよ?寝てて。」

「いえ、やります。一応お仕事ですし、鼎さんの役に立ちたいですし。」

「ありがと、亜水弥。じゃぁそっちのこれを…」


アンドロイドの少女がきた次の日だ。

早朝からしている研究は、時空間移動機器。

いろんな細々の研究は、昨日のうちにしたり、ほかの研究の人に任せたりしているらしい。

亜水弥は、とりあえず鼎の側近のようなものなので、こちらに来ている。




「でーもいちからっちゅーんは難しいなー」

「爆発させたからでしょう」

「まぁ記憶力はめちゃくちゃええし。大丈夫やろうけど」

「前々から気になってたんですけど、どうしてそんなに記憶力良いんですか」

「それだけが取り柄なんよ。」

「そうですか」

軽く会話して、黙々と作業する、二人。

数時間経ち、一端休憩。


亜水弥は鼎に断ってから、少し研究室を出た。

ちょっと徘徊してみたい気分だったのだ。



歩いていると、シャーナと祁葉の姿。

どうやら何か話しているらしい。



「っと…昨日は、途中で放りだして…ごめん
今日、案内し直す。教えないとわかりにくいとこ、あるから…」

「いえ、私もいいすぎました。初対面でいきなり悪かったです。」

「…ん…じゃ、いくか」


―あぁ、昨日のことか。


どういう経路でか、そのことは亜水弥の耳にも入っていた。
二人が、こじれなくて、よかったと、思う。

祁葉は自分よりも、自分なんかよりも、辛い過去を、持ってる。

両親に愛されなかったとか、そんなのだけじゃない。

早く、その傷がいえればと、思う。

難しいけど。

不可能じゃない、気がするから。



「あ、そろそろもどらなきゃ。」

踵を返し、先ほどまでいた研究室へ向かう。



今は、すごく、幸せだ。

例え家族と一緒にいなくても

家族のような、人がいる。


だから、こそ


ずっと続いてほしいこの幸せが、とぎれるのが、怖い。

誰にも言わない、この気持ち。


永遠なんてないのだと。
思ってしまっている、嫌な自分。



今日も、大丈夫、何もない。ずっと幸せだ。と

言い聞かせて、過ごす。


「すいません、鼎さん。今戻りました」

「良いよ良いよ。じゃ、また続きたのむな」

「はい」



かわらずに、日々は優しいから








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