闇は怖い。 昔を思い出して。日の光なんて、入りはしない場所を
狭いのは怖い。 囚われたようで。 何も知らなくて、ただ、恐ろしくて逃げた。
世間も、自分の事すら。
親のことも、自らの名前も何もかもわからなかった。忘れていた。
それでも期待したのは何故なのだろう。
飛び出して、得たモノは−…
たくさんの想いと、名前と、自分の居場所。言い切れないの幸せなものたち
忘れたモノは、どこへ?
大事な、はずなのに。
「おいで、...」 「おりこうで、よい子ね、...は…」 幸せの残像。 すぐに歪む 誰かを呼ぶ声は、何? そこに居るのは誰? 疑問を感じた時にはもう、見たくない夢に入っていて 良く考えることはできなくなって ずっとずっと同じ場所 外の景色はない 暗くて狭い鉄格子の中 毎日毎日 囚われていた。何故かもわからず やめて…これ以上見せないで 頭が痛い。息が苦しい。 体が軋む 「…がはっ…はぁ…っ!!」 ばっと目を覚ますと、電気がついたままの明るい室内。 いつもの天井 この瞬間が一番怖い。目を開けて、もしも、もしもあの…― 「大丈夫ですか?」 突然の声に、祁葉はびくっと体をこわばらせた。 「私は耳が良いのです。うめき声が聞こえたので。…私は機械なんで寝ませんし」 軽くうつむくと、シャーナは、”もう大丈夫なら”となにも聞かずに、立ち上がった。 祁葉は、”ありがと”とだけ、かろうじて言った。 話す気になんて、なれない気分だった。まだ頭の中では映像が残っていた。 「では、また明日に〜」 部屋を出て行く瞬間 パチンと、明かりが、消えた。 当たり前の、こと、なのだけれど。 祁葉には 「うわぁああ!!やだっ!や、めろ…」 そうじゃ、なかった。 「どうなさったんですか!?」 あわてて電気をつけ近づくシャーナ。 祁葉はガクガクと、頭を抱えて、震えていた。目を見開いて、うっすらと涙をにじませ 「あ…ぁ…」 「祁葉さん…」 「…わ、るい…変なとこ、みせて…」 「いえ…」 夢の映像よりも深い記憶が引っ張り出され、体も心も一気に拒絶した 「俺、せまいのと暗いのは、駄目なんだ…あと、一人も苦手。」 「そう、なんですか」 何故こんな事を、会って間もないシャーナに話したのかは祁葉にはわからなかった。 「…なんか発作が、起きる…」 「・・・・・。良かったら、一緒に居て差し上げますよ。寝なくて暇ですし。」 「っ…別にいい!」 さすがに照れくさい。いや、相手はアンドロイドなんだけれども。 本当に、そこまでしてもらってもという気持ちもあるし。 何より、完全に信じてはいない自分がいるから。 「ありがと…シャーナ。だいぶシャーナのおかげで落ち着いたし」 「はい…」 けれど夢から覚めて人がいるのと居ないのとでは こんなに違うとは想っていなかった。 一人じゃないということは、すごく、幸せ。 怖さもつらさも、半分になる。がんばれる。 そのことに気付いた、ある夜。 戻る