「ごめん」

背を向けたまま、少年―キルスは呟いていた。
もうレオナとの距離は大きくあいているため、聞こえてはいないだろう。     


「謝ることしかできないな…」

キルスは言いながら、落ちてきた雫を感じる。


「雨か…」

ポタリと、曇った空から落ちてくる冷たさ。
それは頬を流れるモノと同じで。

同じように、心の内を表しているようで


「出来るなら、あの頃に…戻れたら」

自分自身の手を見つめ、見えない何かを握りしめ
遠くを見つめ、思いをはせて。

雨に打たれながら、立ち止まっていた。




ただただ平和だった、あの頃は。
一緒にいたいと思うがままに共にいた。

二人で同じ事を願ったときもある。そのまま、ずっと想いは同じだと信じていた。
離れることになった今でも、まだ同じだと…同じであってほしいと願っていた。





「遠い国の習慣らしいが、こういうのを知っているか?
毎年7月7日に、ササ…ここでいうシスイの木に"短冊"というモノを飾るんだそうだ。
その短冊にはお願い事を書く。そうすると星が願いを叶えてくれるらしい。」


俺は、いつかに聞いた話をレオナにした。
オリヒメとヒコボシの話も一緒に。

なんだか恥ずかしかったけれど、レオナが喜びそうな話だったから。



レオナは早速やろうといって、紙を取り出し、俺の言ったように切った。
そして、俺にもその紙を渡して「一緒にお願いをしよう」とそういった。


「別に俺は…」 
「え〜!やらなきゃ!私だけって楽しくないでしょ!」


結局無理矢理押し切られて、自分でも恥ずかしいことを書いていた。
なにやってんだろ…と思ったけど、なんとなくそのままにしていた。




「キルスのお願いってどんなの書いた〜?」

「バッバカッ!大したことじゃねぇよ!見るな!」

「そんな事言われるとよけい気になるよ!ほらかして!」

ばっと短冊は取られて読まれる。
あー…なんか態度とか変わったら…いやだなぁ…とか考えていた。

「え…」

ほら、たぶん引いてる。



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