「・・・・・」


二人が離れて、一ヶ月は経とうとしていた。
レオナはしずかに朝食を取っていた。



家にはレオナ以外だれも居ない。しんと静まり返っている。
小さい頃に、レオナは親を亡くしていた。


親戚が引き取ろうと言ったが、レオナはこの家から離れるのを拒んだ。
だから、少しのお金と食料を、毎月持ってきてもらっている。
そして、庭が広いため少しばかり野菜を作って生活していた。



一人のレオナにはこの家は大きすぎた。



キルスがどこかへ行って、昔の孤独が蘇った。

寂しくて苦しくてどうにもならない。 

暮らしている村は都市から離れていて、同じくらいの歳の子はほぼ居なかった。




「キルス…どうしてるかな…」
思うが、探そうにも手がかりは何もない。

昔いたという場所くらいは少し知っているが、あまりにも遠すぎる。

「でも…いるかもしれない…」


わずかな希望を胸に、想いを押さえきれなかったレオナは
午後…自分の家を出た。



旅は辛く険しかった。山を越えたりもした。
そんなうちに十日ほどたち、食料もつきてきた。水も…荒れた土地にはほとんどなく…

「はぁ…はぁ…」

歩いていると…水音が聞こえた。
川が、あった。

その先に、教えてもらった土地が見えた。
魔物の自分の記憶を相手に伝える能力で教えて貰ったこの土地は、鮮明に覚えていた。     


あとは渡るだけ…

あの七夕のお話のオリヒメとヒコボシのように。


レオナもまた、あの頃を、思い出していたのだった。

平和で、幸せで、これ以上何もいらなくて。粗末な暮らしも辛くなくて…





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